「またこの月末か…」
溜まりに溜まった紙の報告書と、各部署から送られてくるバラバラなフォーマットのExcelファイルに囲まれ、私はデスクで頭を抱えていた。営業日報、現場からの進捗報告、備品申請…全てが手作業、またはPCでしか対応できない旧態依然としたやり方だった。特に現場のスタッフからは「スマホでサッと報告できたらどんなに助かるか」という声が常に上がっていたが、高価なシステム導入は予算的に厳しく、IT部門もリソース不足。私は部署のリーダーとして、この非効率な業務フローを何とかしなければと焦っていた。
「このままじゃ、いつまで経っても残業地獄から抜け出せない。スタッフのモチベーションも下がる一方だ…」
心の声が響く。正直、もう限界だった。新しいシステムを導入しようと情報収集しても、どれもこれも高額で、ウチのような中小企業には手が出ない。かといって、Excelマクロで複雑な仕組みを作ろうと試みたこともあるが、専門知識の乏しさからエラーの嵐。結局、メンテナンスの負担ばかりが増え、挫折してしまった。「こんな小さなこと一つ解決できないなんて、俺はリーダー失格なのか…」と、無力感に苛まれる日々が続いていた。
そんなある日、たまたまIT部門の友人と飲んでいる時に、彼の口から「GAS」という言葉を聞いた。「Google Apps Scriptのことだよ。Google Workspace使ってるなら、無料で簡易的なWebアプリも作れるんだぜ?」その言葉に、私は藁にもすがる思いで食いついた。無料で、Webアプリ?しかもGoogleのサービスと連携できる?
最初は半信半疑だった。プログラミングなんて専門家がやるものだと思っていたからだ。しかし、友人は「JavaScriptがベースだから、比較的学習しやすいし、スプレッドシートと連携させればデータ管理も楽になる。特にHTMLフォームを使えば、スマホからも簡単にデータ入力できるツールが作れるかも」と、具体的な可能性を示してくれた。その時、私の胸に一筋の光が差し込んだ。「これだ…!もしかしたら、この呪縛から解放されるかもしれない…」
私は早速、GASについて調べ始めた。公式ドキュメントや、先人たちの知恵が詰まった技術ブログを読み漁る日々。まずは簡単なHTMLフォームを作成し、スプレッドシートにデータを記録する仕組みから試した。最初は、思い通りに動かないコード、レイアウトが崩れるフォームに悪戦苦闘した。「なぜこんな簡単なことができないんだ…」と、何度もPCを閉じたくなった。特にスマホ対応には手こずった。PCでは完璧に見えても、スマホで見ると文字が小さすぎたり、ボタンが画面からはみ出したり。「こんなはずじゃなかったのに…」と、焦燥感に襲われた。メディアクエリというCSSの技術を学び、試行錯誤を繰り返す中で、ようやくスマホでも見やすいレイアウトが実現できた時は、心底ホッとしたのを覚えている。
まるで、自分のキッチンで、必要な道具(GAS)を揃え、自分好みの料理(業務ツール)を作るような感覚だった。高価な既製品(SaaS)を買うのではなく、自分の手で問題解決の糸口を掴んでいく。その過程でエラーにぶつかり、解決するたびに、小さなマスタリー体験を積み重ねていった。
数ヶ月後、私はついに「スマホ対応!営業日報Webアプリ」を完成させ、社内でのデプロイにこぎ着けた。現場の営業スタッフに試してもらうと、彼らの顔がみるみる明るくなっていくのが分かった。「これなら移動中にサッと報告できます!」「入力ミスも減りそうですね!」と、喜びの声が次々に上がった。紙やExcelでの入力作業が激減し、月末の集計作業もボタン一つで完了。月間の残業時間は平均で20時間も削減され、情報共有のスピードは格段に上がった。データ入力ミスも以前の10%以下に抑えられたのだ。
「まさか、こんなに変わるとは…」
私自身の仕事も劇的に楽になり、本来の業務に集中できるようになった。何よりも嬉しかったのは、スタッフたちの「ありがとう」という言葉と、彼らの笑顔だった。あの時、IT部門の友人の言葉を信じて、一歩踏み出して本当に良かった。小さな一歩が、会社を動かす大きな力になることを、身をもって体験した瞬間だった。
GASとHTMLフォームを使ったWebアプリ開発は、決してプログラミングの専門家だけのものではない。Google Workspace環境があれば、追加コストなしで誰でも始められる「業務改善のDIYキット」なのだ。特にスマホ対応は、現場の生産性を飛躍的に向上させる「ポケットオフィス」として機能する。もしあなたが今、私と同じように非効率な業務に頭を悩ませているなら、ぜひGASの扉を開いてみてほしい。
【GASでスマホ対応Webアプリを作るためのロードマップ】
1. GASの基礎を学ぶ: Googleの公式ドキュメントやオンラインチュートリアルで、GASの基本的な構文(JavaScript)とGoogle Workspaceサービスとの連携方法を理解しましょう。
2. HTMLとCSSの基本を習得: Webアプリの見た目を作るHTMLと、デザインを整えるCSSの基本は必須です。特にスマホ対応のためには、viewportの設定やメディアクエリの活用が重要になります。
3. シンプルなフォームから開発開始: まずは、テキスト入力と送信ボタンだけの簡単なフォームを作成し、スプレッドシートにデータを記録する仕組みから試しましょう。小さな成功体験が、次のステップへのモチベーションになります。
4. スマホ対応を意識したデザイン: 初めからレスポンシブデザインを意識してコーディングを進めましょう。CSSのFlexboxやGridを活用すると、スマホとPCで柔軟に対応できるレイアウトが作りやすくなります。
5. Webアプリとしてデプロイ: 開発したGASプロジェクトをWebアプリとして公開します。Google Workspaceのアカウントに紐付けることで、社内限定のツールとして安全に利用できます。
6. テストと改善: 実際に利用者に使ってもらい、フィードバックを元に改善を繰り返しましょう。このアジャイルな開発サイクルが、より使いやすいツールへと進化させます。
もう、Excel地獄に終止符を打とう。あなたの「やりたい」が、明日を変える。スマホが、あなたの最強の業務改善ツールになる日は、もうすぐそこだ。
