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社内GASツール、その「便利さ」は本当に安全?情報漏洩を防ぐ対策Q&A

「これさえあれば、もう残業しなくて済む!」

数ヶ月前、私は興奮していました。Google Apps Script(GAS)を使って、社内の煩雑なデータ集計作業を自動化するツールを完成させたばかりだったからです。毎日数時間かかっていた作業が、ボタン一つで数秒。上司も同僚も「すごい!助かる!」と絶賛し、私は「これで会社に貢献できた」と大きな達成感に包まれていました。

しかし、その「便利さ」の裏に、見えない刃が潜んでいることに、当時の私は気づいていなかったのです。

ある日の夕方、顧客情報が詰まったスプレッドシートと連携したGASツールを最終確認していた時のことです。ふと、ツールの共有設定に目が留まりました。「リンクを知っている全員が閲覧可能」――。一瞬、心臓が凍りつきました。「まさか…」

私は慌てて設定を確認しました。確かに、ツール自体は社内限定の共有設定になっていました。しかし、そのツールが扱うデータ、特に外部APIと連携して取得した一部の顧客データが、意図せず外部に流出する可能性がゼロではないことに、その時初めて気付いたのです。「このままじゃ、会社が、顧客が、取り返しのつかない事態になるかもしれない…」「なぜもっと早く気づかなかったんだ…、俺はなんて馬鹿なことを…」冷や汗が背中を伝い、胃の腑が締め付けられるような罪悪感に襲われました。便利さばかりを追い求めて、一番大切な「セキュリティ」を疎かにしていた自分を、心底呪いました。

このままではいけない。そう決意した私は、すぐに情報セキュリティに詳しい友人に連絡を取りました。彼はセキュリティコンサルタントとして活躍しており、私の焦りを聞いてすぐに助言をくれました。

「便利さの追求は素晴らしい。でも、それは『鍵のかかっていない宝物庫』を作るのと同じ危険性を孕んでいるんだよ。GASは強力なツールだからこそ、正しい知識と使い方を知る必要がある」

彼の言葉は、私にとってまさに「覚醒」でした。私は、GASのセキュリティについて根本から学び直すことを決意しました。

あの時の私と同じように、「GASの便利さに惹かれるけど、情報漏洩が怖い」「セキュリティって、具体的に何をすればいいの?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、私が実際に直面した懸念と、専門家の助言をもとに学んだ対策をQ&A形式でご紹介します。あなたのGASツールを「安全な宝物庫」に変えるためのヒントが、きっと見つかるはずです。

Q1: どんな情報が漏洩する可能性があるの?(スコープ、外部連携のワナ)

A: GASはGoogleのサービスと密接に連携するため、スプレッドシート、Gmail、Google Driveなど、社内の様々な機密情報にアクセスする可能性があります。特に注意すべきは、スクリプト実行時にユーザーに許可を求める「スコープ」です。例えば、「スプレッドシートをすべて表示、編集、作成、削除」というスコープを許可してしまうと、意図しないスプレッドシートにアクセスし、データを操作するリスクが生まれます。

また、外部APIと連携する場合、そのAPIを通じて外部サービスに機密情報が渡ってしまう可能性も。私の失敗談のように、共有設定の甘さや、スクリプトの不備によって、本来アクセス権のない第三者がデータに触れるリスクは常に存在します。「まさか、こんなところから?」という盲点が多いのが実情です。

対策:

  • 最小権限の原則: スクリプトに必要な最小限のスコープのみを許可しましょう。不必要な権限は与えないのが鉄則です。
  • OAuth同意画面の確認: スクリプト実行時に表示される同意画面の内容をよく確認し、どのような情報にアクセスしようとしているのかを理解してください。
  • 外部API連携の厳格化: 連携する外部APIのセキュリティポリシーを確認し、信頼できるサービスのみを利用しましょう。また、送信するデータを最小限に絞り込み、暗号化などの対策を検討してください。

Q2: 権限設定はどうすればいい?(OAuth同意画面と共有設定)

A: GASスクリプトの権限設定は、情報漏洩防止の要です。特に、スクリプトをWebアプリとして公開する場合や、他のユーザーと共有する場合には細心の注意が必要です。

「誰でも実行できる」設定にしてしまえば、悪意のある第三者によってスクリプトが悪用され、機密情報が抜き取られる可能性も否定できません。「たかが社内ツール」と甘く見ていると、会社の信用を失いかねません。

対策:

  • 実行ユーザーの制限: Webアプリとして公開する場合、「自分のみ」または「組織内のユーザーのみ」に実行を制限しましょう。不特定多数に公開する際は、認証メカニズムを必ず導入してください。
  • スプレッドシートの共有設定: スクリプトが参照・操作するスプレッドシート自体の共有設定も重要です。閲覧者や編集者を限定し、不必要な共有は避けてください。
  • プロジェクトの管理: スクリプトプロジェクト自体も、必要なメンバーのみに編集権限を与え、共同開発時はバージョン管理を徹底しましょう。

Q3: 外部API連携は安全?(APIキーの管理とスクリプトプロパティ)

A: 外部API連携はGASの強力な機能ですが、APIキーなどの認証情報をスクリプト内に直書きするのは非常に危険です。万が一スクリプトが公開された場合、APIキーが悪用され、不正アクセスや情報流出の原因となります。

私も一度、外部の天気予報APIを試した際に、APIキーをそのままスクリプトに記述してしまい、友人に「それは『家の鍵を玄関マットの下に置いている』ようなものだよ」と厳しく指摘されました。

対策:

  • スクリプトプロパティの活用: APIキーやパスワードなどの機密情報は、GASの「スクリプトプロパティ」に保存しましょう。スクリプトプロパティはスクリプト内からのみアクセスでき、コードに直接記述するよりも安全です。
  • サービスアカウントの利用: Google Cloud Platform (GCP) のAPIを利用する場合、サービスアカウントと適切なIAMロールを設定することで、よりセキュアな認証が可能です。
  • APIキーのローテーション: 定期的にAPIキーを更新する習慣をつけましょう。

Q4: 誰でも触れるスプレッドシートデータは?(入力値検証とログ管理)

A: GASツールがユーザーから入力されたデータや、スプレッドシート上のデータを処理する場合、そのデータが「正しいもの」と決めつけるのは危険です。悪意のある入力や、意図しないデータによってスクリプトが誤動作し、情報漏洩やシステム破壊につながる可能性もあります。

「うちの社員は大丈夫」という性善説は、セキュリティにおいては通用しません。ヒューマンエラーは必ず起こりうるものです。

対策:

  • 入力値検証(バリデーション): ユーザーからの入力値やスプレッドシート上のデータは、必ずスクリプト側で検証しましょう。想定外の文字や形式、範囲外の数値が入力された場合はエラーとして処理し、不正なデータがシステムに影響を与えないようにします。
  • ログ管理: スクリプトの実行履歴やエラー情報をログに残す習慣をつけましょう。異常なアクセスやデータの操作があった場合に、早期に発見し、原因を特定するのに役立ちます。Stackdriver Logging(現:Cloud Logging)の活用も検討してください。
  • データの暗号化: 特に機密性の高いデータは、スプレッドシート上でも暗号化を検討しましょう。

Q5: そもそも、自社でGASツールを作るのは危険?(専門家との連携、リスク評価)

A: 結論から言えば、「危険」ではありませんが、「リスク管理」は必須です。GASは中小企業にとって、コストを抑えて業務効率化を図る強力な武器となり得ます。しかし、その力を最大限に、かつ安全に引き出すには、セキュリティに関する正しい知識と運用が不可欠です。

あの時、私は「自分で作れば完璧」と過信していました。しかし、それは大きな間違いでした。

対策:

  • セキュリティチェックリストの活用: GASツール開発前に、情報セキュリティに関するチェックリストを作成し、リスクを洗い出す習慣をつけましょう。
  • 専門家への相談: 必要であれば、情報セキュリティの専門家や、GAS開発に詳しいコンサルタントに相談することを躊躇しないでください。第三者の視点が入ることで、見落としがちなリスクを発見できます。
  • 社内規定の整備: GASツール利用に関する社内規定を整備し、安全な利用を促す文化を醸成しましょう。

便利さと安全性の両立へ

あの時、情報漏洩の危機に直面し、私は深い絶望と後悔を味わいました。「もうGASなんて使わない」とさえ思いました。しかし、正しい知識を身につけ、適切な対策を講じることで、GASは再び私の強力な味方になってくれました。今では、社内の様々な業務でGASツールを安全に運用し、同僚からも「セキュリティも考えてくれて助かる」と信頼されるようになりました。

GASは、あなたのビジネスを加速させる強力なエンジンです。しかし、そのエンジンを安全に動かすためには、必ず「セキュリティ」という名のブレーキとハンドルが必要です。

このQ&Aが、あなたのGASツールを「安心」という翼で羽ばたかせる一助となれば幸いです。便利さと安全性の両立は、決して夢物語ではありません。一歩ずつ、確実に、あなたの社内ツールを最強の味方に育てていきましょう。

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